水面に浮かぶ月
頑張らなくちゃ、頑張らなくちゃ。
しかし、そうやって自分を追い込むことで、さらにストレスは増した。
「なぁ、お前、ちょっと痩せたか?」
リョウに心配そうな目で見られる。
やめて。
優しくしないで。
目的も忘れて、縋ってしまいそうになるじゃない。
「別に、平気よ」
「見てる俺の方が嫌だっつってんだよ」
リョウは不機嫌に吐き捨て、「あー、もう!」と、頭を掻くと、
「そんなになってまで叶えなきゃいけない『夢』って何だよ! 自分の体のことより大事かよ!」
引き寄せ、抱き締められた。
困惑と、混乱。
透子は驚いたままに固まった。
「マジでもう辞めちまえよ、仕事なんて」
涙が出そうだった。
しかし、それでも、透子は光希を裏切ることができなかったのだ。
光希は透子にとっては今も昔も唯一無二の存在だから。
「ごめん。私、帰るね」
透子はリョウの腕を振り払った。
「おい、透子!」
光希を愛してる。
それは変わりないはずなのに。