水面に浮かぶ月
俺にとってはこの1ヶ月半が、どんなに長かったか。
何度も何度も、透子とリョウの姿を想像しては、嘔吐を繰り返した。
考えるだけで、嫉妬の炎に焼きつくされそうになった。
でも、それもすべて終わりにしてやるよ、リョウ。
透子が店休日である翌日。
「透子。俺だ。これから最後の仕上げをする。2時間くらい、リョウと外に出てて」
透子にそう電話を掛け、光希はひとり、リョウの住むアパートに向かった。
何度か訪れたことはあるので、部屋はわかっている。
あたりを確認し、光希は透子から郵送された合鍵でそろりと部屋の鍵を開けた。
電気はつけない。
暗がりの中、テレビ台の裏を探ると、透子からの情報通り、ガムテープで貼り付けられた小さな鍵があった。
それを手に、食器棚に向かい、奥を探ると、
「あった」
シルバーの手提げ金庫。
焦る気持ちをこらえ、ゆっくりとそれの鍵を開ける。
「おいおい。すごいな、これは」
無造作に入れられている、現金の束。
ざっと見積もっても、200万はありそうだ。
そして、それと共に、いくつかのクスリのパケが入っていた。
光希は急いでそれらを手持ちのバッグに入れ、最後に、強盗の仕業と見せかけるために、手近にあるチェストの引き出しをすべて開け、部屋を荒らした。
完璧だ。
光希は高笑いしそうになりながら、リョウの部屋を後にした。
当初の計画通り、光希はリョウの持っている情報と金、すべてを奪い取ったのだ。