水面に浮かぶ月
3階にある事務所に戻ると、ミーティング待ちだった優也とシンが、光希を見て立ち上がり、「お疲れさまです」と頭を下げた。
光希はソファに座り、ふたりにも座るようにと促した。
「あれ? 光希さん、今日は何だか機嫌がよさそうですね」
優也の指摘に、光希は「まぁね」とだけ返した。
「じゃあ、もっと光希さんがご機嫌になるご報告を」
前のめりに言ったシンは、『promise』の売上日報を光希に差し出した。
光希はそれに目を通す。
今月の売上は、先月比の1,5倍にまでなっていた。
「すごいじゃないか、シン」
「ありがとうございます。光希さんに認めてもらえて、俺も嬉しいです」
謙遜しながらも、シンは誇らしげな顔をしている。
『cavalier』の売上は常に安定するようになり、おまけに『promise』もゆっくりではあるが、着実に顧客を増やしている。
邪魔なリョウを消せた今、光希にとっては追い風が吹いているようなものだった。
「本当にすごいよ、ふたり共。見込み以上だ。臨時ボーナスを考えておくよ」
優也とシンは顔を見合わせ、うなづきを交わしていた。
すでに季節は梅雨目前だ。
21歳の誕生日までは、後もう少し。
これなら、今年中に、計画を次の段階へと進められる。
光希はまたしても笑いが込み上げてきそうだった。