水面に浮かぶ月
その日から、透子は、自分の店を出店するための準備を本格的に始め出した。
場所はどこがいいか。
広さは、家賃は、店内の装飾は、スタッフの数は。
キャストはどんな子がいいか。
頭の中では昔から理想とするイメージはあった。
だが、実際にそれを叶えるとなると、何を、どうするべきなのかと、何度も考えては悩んだ。
けれど、それは不思議と苦にはならなかった。
それどころか、透子はやる気に満ち満ちていた。
どんな時も、光希が片側にいてくれているとわかっているからこそ、強くいられたのだ。
やっと夢が叶うと思えば、手を抜けるはずもない。
そして、3週間後。
透子は休みを取り、光希とふたりで2泊3日の旅行をした。
行楽地の温泉街。
近くには湖があり、美術館や、動物園なんかもあるところだった。
繁忙期ではなく、おまけに平日だったため、静かにふたりだけの時間を楽しんだ。
光希と外で堂々と手を繋ぎ、普通のカップルのように、笑い合った。
たくさんの写真も撮った。
ひと時の安らぎ。
だが、夢が叶えばこんな日々も当たり前になる日が来るのだ。
そのために――そのためだけに、生きてきたのだから。
だから、たとえ、何をしようとも、誰を騙そうとも、透子は光希とふたりで幸せになりたかった。