絵描き女子と次期社長
love.1
今は霜月。
絵描きに向かう心は
いつも熱情にまとわれて
私は満たされる
今日もまた何もなければ、一日の今頃は会社を出て自宅に向かう電車のホームにいるはずだった。
どうしてこうなったんだろう。
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事の起こりは昨日の終業5分前。
私のデスクの電話が鳴り受話器をとった。
「はい、資料館管理部ミサキです」
「…副社長代理の吉田だ」
…、副社長代理?
やば、困ったな…
―――――、思い出す記憶の一片は、3年前の春。
一瞬伏せた目に気づかされて、回想に入りかけた思考を呼び戻して現実に立ち返る。
はっ、あぶないあぶない
内心動揺しまくりなことを微塵も見せずに相手に問う。
「お疲れさまです。
どういった御用件でしょうか」
「君が好きだ
きょうから俺の婚約者になったからよろしく」
なんだって?
「……、お断りします」