【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
ふと、そんな声にハッとすると、女が俺
を不思議そうに見つめていた。
「大丈夫ですか?具合が悪いようでした
ら、養護教諭をお呼びしますが」
「いや、いい」
そう断ると、申し訳ありませんでした。
と女は頭を下げて、俺を特設ステージの
裏側へと案内した。
「では召集されるまでお待ち下さいね」
最後に営業スマイルを浮かべながら女は
去っていき、俺は静かに息を吐いた。
夢にも思っていなかった。
またこうしてここに立つことも。
グランプリを狙っている事も。
そんな自分が情けないような、でも、褒
めてやりたいような気分だった。