【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
「どうして、スーツ……」
真っ黒なスーツは、高校生のくせして、
違和感が全くといっていいほどなく、似
合ってる。
「これから親父の手伝いで仕事があるん
だ。……それまで、俺にくっついてろ」
辻宮はそう言うと、私の腕を掴んで歩き
出した。
くっついてろって言うくせして、こんな
んじゃ離れることだって出来ない。
だけどきっと、私は。
手を掴まれてても掴まれて居なくても、
辻宮についていっただろうけど。
認めたくない。認めたくないけど。
もう辻宮に、従順な私が出来上がろうと
していた―――……。
辻宮に連れていかれたのは、近くの公園
だった。
辻宮は、私に座ってろ、とベンチに促す
と、自分はコーヒーを買ってきてくれた
。
「美里、コーヒー飲めるか」