【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
まるで、"行かないで"って懇願してるよ
うな声。
「……私の出る幕はないなって、思った
んです」
仕方なくそう言うと、私を抱き締める辻
宮の力が強くなって。
「ふざけんな……」
辻宮は、呻くようにそう呟いた。
「出る幕が無いとか、なんでお前が勝手
に決めんだよ。お前は俺についてればい
いんだよ……俺はそれで、救われてる」
―――『俺はそれで、救われてる』
そんな辻宮の言葉が、素直に嬉しかった
。
無力だとばかり思っていたのは、間違い
だった。
……辻宮は、こんなにも私を必要として
くれている……。
「だから、自分を卑下すんな……って、
お前がさっき俺に言ったんだろ」