【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
ちょっと呆れたようにそう言った辻宮に
私も微かに笑った。
「……そうですね」
自分を、知らないうちに卑下していたの
か……。
揚げ足取られたなあ、なんて思っている
と、不意に。
「―――なあ、キスしてもいいか?」
背中をゾクゾクっとかけ上がるような声
で、そう囁かれて。
一瞬、全ての思考が停止した。
「……は、はぁ!?」
いま、すっごくいい雰囲気だったのに!
ちょっとだけ、辻宮を見直したのに!!
なんでこの人はこうも、ムードをぶち壊
すのが得意なんだろう。
そのくせして、自分のムードに持ち込ん
だら、簡単には手放さない。