【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
自分でも驚くくらいに低い声が出て、縁
も僅かに肩を揺らした。
やるせない気持ちと、いいように騙され
てた自分への怒りが蓄積されて、破裂し
そうだった。
「俺を騙して……楽しかった?」
「……」
「……ごめんな、苦しめて」
俺がそう言うと、一瞬だけ、縁は悲痛そ
うに顔を歪めた。
でもすぐに気丈さを取り戻して、あの、
悪魔のような微笑みを浮かべて見せた。
「今更謝ったってしょうがないわよ。私
、一生許さないから……あなたのこと、
ずっと恨んでるから。これで復讐が終わ
るなんて思わないことね」
それだけ言うと、縁は俺の横を通りすぎ
て、どこかへ……消えていった。
次の日、縁はどこかへ引っ越していた。
縁の住んでいた家は取り壊され、縁は学
園からも消え去った。
俺に、深い傷を残していったまま。