【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
数週間後、俺の家の金庫から、数千万が
盗まれていた。犯人はわかっている。縁
だ。
警察に届けを出しましょう、と言った執
事を止めた。
こうなったのも全て俺のせいだったから
……被害者の顔なんて出来なかった。
数千万消えた所で、困るような家でも無
かった。
ただ、金目当てでもあったことで更に、
俺は胸が苦しくなり、あの日、縁が俺に
大きなバッグをねだった理由を知る。
人間すら信じるのが怖くなった。
女なんてもっと信用ならなかった。
なのに―――……。
「お前が現れたんだよ、美里……」
一通り話終えてそう言うと、美里はポロ
ポロと涙をこぼしていた。
普段の強気な美里からは、考えられない
その現象に俺は少し戸惑う。