【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
諭すような声を出した彼に、なんでもな
さげにそう言った縁さん。
まるで自由気ままな猫のよう。
「じゃあ、皆、仲良くするように」
担任のそんな声を合図に、ちらほらと、
拍手が聞こえた。
その刹那、縁さんと視線が交わった気が
して───彼女は。
その美しい顔に、ゾッとするような微笑
みを浮かべた。
◆◆◆
「……あぁ、知ってたよ」
その日の放課後。
少々気後れしながらも、今朝の話をする
と、辻宮は感情の読めない声でそう言っ
た。
知ってたのか……。
「ねえ、辻宮……」
「ん、どした」