【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
それに反応して後ろを向けば、そこには
苛立ったような縁さんが立っていて。
どうしてそんなに怒った表情を浮かべて
いるのか、わからなかった。
「縁、さん……?」
「私だって、したわよ」
恐る恐るそのなを呼べば、絞り出すよう
な声で、縁さんがそう言って。
鋭い目付きで、私を睨んだ。
「私だって、秋とキスしたわよ!」
その瞬間、ズキ、と鈍く傷んだ胸。
痛む必要なんてないのに。そうなんだ、
って流せばいいのに。
痛い。
今にも張り裂けそうなくらいに、胸が痛
かった。
「私だって、秋に愛されてたし、抱き締
めてもらったし、それに───」
「縁」