【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
縁さんの言い分を一蹴するようなその低
い声に、縁さんがピタリと止まる。
その大きな瞳は、困惑に満ちていた。
「好きな女が他の男とキスしたとか、そ
んなの聞いて俺が喜ぶと、思ったか?誰
が幸せじゃないなんて言ったんだよ」
「───……っ」
「突然この学園に戻りたいとか言い出し
たと思えば───……まさか、これが目
的だったの?」
「そ、れは───……」
「今の縁、醜いよ?」
常山くんにそう言われた縁さんは、耐え
きれなくなったのか、嗚咽を洩らして、
泣き出してしまい。
そんな縁さんを、常山くんは優しく抱き
締めた。
「俺はこうしてまた、縁が戻ってきただ
けで幸せなんだから、もうこんなのは、
やめよう?」
「う、ん……っ」
常山くんは、申し訳なさそうに私に微笑
んで。