【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
◇告白、高鳴る胸。
12月25日。
気が付けば辺りは凍えるほどに寒くなり
、吐息は真っ白に濁る季節。
そして今日はクリスマス。
私の予定では、家でゴロゴロして、お休
みを満喫する予定だったのだけれど。
そんな私はただいま、何故だかベンツに
乗せられている。
そして、私の隣には、辻宮。
「あのー……」
「なんだ」
「もしかして私、誘拐されてますか?」
苦笑いしながら隣に座る、今日も異様な
くらいのイケメンオーラを放つ憎きご主
人様にそう尋ねると、辻宮は怪訝そうに
眉を潜めた。
"誘拐"なんて言われたのが不本意だった
のか、私をジロリと睨み付けて、「勝手
に犯罪者にするな」と怒られた。
───……でも、そう思いたくもなる。
そんな風に思いながら、この黒塗りの車
にはおよそ似つかわしくない、自分のパ
ジャマ姿を見下ろした。