【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
◆素顔、優しい微笑み。
連れてこられたのは、辻宮の私室。
「くそっ……!」
辻宮は苛立ったように吐き捨てて、前髪
をかきあげた。
私はどうしたらいいのかわからなくて、
ただ、辻宮を見つめるだけ。
もしかして……私が、辻宮とお父さんを
あんな状態にしちゃってるんじゃないの
かな……。
私、ここに居るべきじゃないのかもしれ
ない。
だって辻宮のお父さんの言う通りなんだ
もん。
私が辻宮と結婚しても、辻宮に利益なん
てない。
私には人脈も権力も、社会的地位がある
わけでも無いんだから……。
「辻宮……」
「俺の言うことだけ聞けって、言ったろ
」
辻宮を呼ぶと、鋭い眼差しでこっちを見
てきた辻宮。
思わず、ゴクリと生唾を飲み込む。