【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
「お前が考えそうなことなんて、わかり
きってるんだよ。どうせ親父の言葉に揺
れてるんだろ?」
「……。」
「───ふざけんなよ」
図星だったから、何も言えなくて。
誤魔化すようにうつむいたら、ふわりと
包み込むように抱き締められた。
「俺はお前じゃないと駄目なんだよ……
。お前が、いいんだよ……」
「辻宮……」
「逃げよう」
……え?
「ここから逃げよう。こんな家、もう知
らねぇ」
「に、逃げるってどこに……」
「どこでもいい。出来るだけ遠くに。ど
こか外国に。クレジットカードだと、止
められる可能性があるから出来るだけ現
金で金を降ろしてきて。
そんで、逃げ出せたら俺は就職する。運
良く、十ヵ国くらいなら言葉も話せるか
ら」
え、ちょ、……え!?