【完】狼ご主人様と子羊ちゃん
どうぞ、と目で促され、頷いて中へと入
る。
そこには、やっぱりどこか冷たい視線を
送る、辻宮のお父さんが座っていた。
「……どうかしたのかな?」
「……ぁ…」
「とりあえず、座りなさい」
そう言われて、ペコリと会釈してから、
黒い革のソファーに腰かけた。
……ど、どうしよう。
何から話せば───。
「別れてくれないか」
何から話そう、と考えていたら、聞こえ
てきた声。
思わず顔をあげると、無表情のお義父さ
んが居た。
「秋に君は釣り合わない。別れてくれな
いか」
「……っ」
「君は頭がいいからね。わかるだろう?
自分にとって何が傷つかない選択か、秋
にとって何が最良なのか」