【完】狼ご主人様と子羊ちゃん





「そ。結婚して……初めての、夜、ね」



どこか妖艶なその響きに、ぞわりと悪寒
が走り、そんな私を秋は憂いを帯びた瞳
で見下ろした。



「……この日まで我慢したんだ、俺は」



秋の手が、私の頬をするりと撫でる。



「お前、ガード固すぎなんだよ。付き合
ってもう何年になると思ってる?今まで
一回も抱かせてくれないって、どういう
事だ、お前」


「……っ」



今度は"夜"なんて含みのある言い方じゃ
なく、はっきりとした言葉で言われたか
ら、顔が熱くなった。



───そう。



付き合いだしてから、約四年。私たちは
まだ一度も一線を越えたことがなかった




というのも……。



「お前が、まだ待って、っていうから待
ってたら、まさか先に結婚しちまうとは
な……」



秋のいう通り、私が拒絶してたから。






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