SONG OF TEAR
奏でる指先に、いつの間にか自分が流したらしい涙が零れ落ちていた。

「…あたしみたい。ありがとう」

何となくで口角を上げて、笑ってみようとしたけど今のあたしは作り笑いにすらなっていないだろう。

もう二度と、ギターなんて弾けないと思ってた。

そう覚悟して入院する前にあたしはギターを捨てた筈なのに…正直久々に弾いて楽しかった。

「なぁ、お前将来の夢何?」

あたしに将来なんて――無いよ。

「俺は、今バンド組んでんだけどさ。そのバンドでデビューする事!!それだけ」

葵は眩しいくらいの笑顔をあたしに向ける。その様子から葵は一番軽い症状なんだろうと思った。

あたしが死んでも、葵は生きれる。

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