SONG OF TEAR

「何?これ」

不思議そうな目をしてパラパラとノートをめくってゆく。

「バンドで歌ってくれない?葵が曲つけて…。勝手やけど、お願い」

どうしても、この曲は葵に歌って欲しかった。今のあたしには歌えないから…だから、託した。

「うん。わかった」

こんな我が儘も聞いてくれる所が葵の良い所だけど、自分のプライドが無いのかって思ってしまう。

ギターを弾きながら真剣に曲を作るその姿勢は好きだよ。とても。

でも何時か…その声はあたしだけのものじゃなくなる。その笑顔もあたしだけのものじゃないよね。

分かってるのに、苦しいからキライ。

< 30 / 37 >

この作品をシェア

pagetop