SONG OF TEAR

楽しそうな声が横から聞こえてくるのを無視して、あたしは眠ったフリをしていた。

「マジで?こんな凄い曲…俺らに出来るんかな」

今日は葵のバンド仲間?らしき人が来たので朝からカーテンを締め切って寝たフリを通しているのだ。

葵のバンド仲間は皆想像以上に、イケメンばかりだった。

…というかただ単に、関わるのがヤダ。関わったら絶対傷つかせる、から。親友は一人だけで良い。そう決めたし。

「起きてる?」

いきなりカーテンが開かれて隙間から顔を出す。ビックリして目をキョロキョロさせていたら、

「作詞・作曲者なんだから曲、こいつらに聞かせてやってくれよ」

と笑ってカーテンを全開し自分のギターと譜面をあたしに渡してきた。…でも譜面は、要らない。

「………Song of Tear…last you…」

何の為に寝たフリを通していたのか分からなかったけど、ただ夢中で指先でギターを奏でた。

声が枯れるくらい、心を込めて歌った。

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