SONG OF TEAR

…綺麗な雪が街を染める。今日は、今年になって初めての雪がこの街に降った。

「もう見れないと思ったのに」

窓際に張り付いて外を眺める。そういえば今日は、クリスマスだっけ。ずっと…長いこと縁が無かったから忘れてた。

「メリークリスマス!!」

葵は朝からテンション高い。好きな人と過ごすクリスマスも何時もと変わらないと思った…。

急に立ち上がって、葵はあたしの唇を塞ぐと指に何かをはめた。

「苦……しっ……」

呼吸困難になる前に葵を突き飛ばして、ふと左手を見る。薬指には…綺麗に輝く指輪がはめられていた。

「これ……」

嬉しくて涙がこぼれそうになる。あたしは何にもプレゼント買ってないのに。産まれて初めてプレゼント貰った。

「この前外出許可出たからこっそり買ってきたんだ。…何か恥ずかしいけど、雫のことマジ好きだから」

でもあたしの余命はもうすぐなのに。こんな綺麗な指輪受け取れない。…あたしはもうすぐ…葵と居られなくなる。

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