恋物語
俺たちは電車で通学しているため、並んで駅に向かう。
誰もいない歩道を、ほとんど無心で歩いた。
いつもはたわいもない会話を切り出してくるはずの琢磨は、無言で地面と睨み合いをして歩いていた。
……器用な奴。
俺は行き場のない視線を、建ち並ぶ住宅に向けた。
ほんの偶然。……偶然だった。
「………あ?」
ある二階建ての一軒家の表札が、目に入った。
望月 要
望月 九郎
望月 玲
「……望月…玲?」
という事は、この家、望月の家なのか。
「望月!?」
俺の呟きは、はっきりと琢磨に届いていたようだ。
食い入るように望月の家を見つめている。
……………あぁ?
自然と目線が望月の家の二階にいく。
そこにいたのは、
「……小野崎……?」