恋物語
二階の窓。
そこから見える後ろ姿は、あの長い黒髪は、間違いなく小野崎のものだ。
………何で望月の家に小野崎が……?
「……!」
小野崎が振り返る。
窓ガラスを挟んで、俺と小野崎の視線がばっちりと合った。
切れ長の綺麗な目がここからでもわかる。
……視力良くてよかった……。
「……ん?」
手招き、してる?
あ、指差して……俺じゃないな。
……あぁ、こいつか。
「おい」
俺は肘で琢磨の腰をつつく。
琢磨が反応した瞬間肘を掴み、望月の家の門の前に突き出した。
「えっ」
「行け。望月、いるぞ」
言うと、琢磨は面白いほど狼狽した表情を浮かべた。
「ちょ、雅樹、でも僕、嫌われてっ」
「そんなんで諦めるのか」
本気なんだろ?
いつも女子に囲まれてるお前が、本気で恋した女子なんだろ?
「行け。……会話、したいんだろ?」
「………っ」