恋物語
「くっそぉ、その髪引っこ抜いて移植したいぜほんと」
「私のハゲ頭を望まないでください。あと、言葉遣いを直しなさいよ。女の子なのだから、一応」
「一応はいらねぇだろ。身は女だって」
「体と言いなさい体と」
玲は本人曰わく、小学生の時からこの男口調だったらしい。
何に憧れたのか、一人称以外は完璧男の子のようだ。
この場合、男の娘……?
玄関の立ち話も程々に、私たちはいつもの通学路を目指す。
朝の清々しい空気は、今朝の荒んだ私の心をいつも癒やしてくれる。
「つか、言葉遣いを直せってもさぁ」
「何ですかいきなり」
「亜紀もだよな、それ。その丁寧口調?他人行儀みたいで止めろよな」
おや、玲の口から他人行儀なんて単語が出てくるとは。
「今失礼な事思ったろ」
「これは心外ですね。………癖なの。直す気もない、癖」
別に普段不便しているような事もないし、別段直す必要もない。
兄がそういう口調だから、私も自然と真似してしまったのだと思う。