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 上司が変わったと聞いて不安を抱いた。だが、海の表情は無理してない事は直ぐに分かった。



 学生の俺には海の苦労は分からない。だから頑張れとは言わない。



 願うはあの海に戻らない事だけ。あの海にさせる様な人と出会わない様にと思うだけ。



「彼女チャンとはどう?」
『別れた』



 俺はシスコンなんだと思う。海の様な芯の強さ、努力を惜しまない人を望んでしまう。



 どうしても海と比べてしまう。そうすると足りない所ばかり見つけて…。



「この人だって人に出会えるよ」



 皆長続きしない事を責めるのに海は絶対に言わない。だから隠さず別れた事も言える。



『崖っぷちなのは海でしょ?』
「追えば逃げるのよ」
『わぁ、肉食系女子』



 未だ海は結婚しないで欲しいと思っている。いい年して変だと思うが、俺だけの海で居て欲しい。



「王子様に出会えますように!」



 流れ星に願う海は可愛い。冗談かと思ったら真剣に願っている。



『また逃げられるよ?』
「本物の王子様は逃げませんよ~だ」


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