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 全て分かって何も無かった事にしてくれた。こういう気遣いが嬉しい。



 正直、根掘り葉掘り聞かれる事を考えていた。想像通りの人だった。日本人には珍しい本当の紳士だ。



「おっ!」
『おはようございます』
「先客が居る」
「悪いかよ」



 社長にフラットに接している。親しい関係なのだろう。



「海ちゃんのコーヒーが1番だよ」
『光栄です』
「海ちゃん?」



 部長が驚いた。そうだよね。



「海ちゃんズカフェの常連客」
『毎朝飲みに来て頂いているんです』



 そう…あの日から…。



 社長は全て分かっている。誰か1人でも真実を分かってくれるだけで十分。それが社長なら私を強くさせる。



「真保から」
『美味しそうなスコーンですね』
「また料理教えてくれって」
『はい、喜んで』



 社長溺愛の奥さんとは料理友達。大きなお屋敷にもちょくちょくお邪魔している。



「夫婦ぐるみ?」
『はい』


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