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 過去に囚われ続けている自分自身に腹立たしい。その事で関係ない人に嫌な思いをさせてしまう。



 大多数の人が忘れた過去の事…。



 でも…私にとっては昨日起きた様な衝撃が未だに残っている。



『頑張れ私!!』



 見上げた月が満月で良かった。あの日は三日月で寒い冬だった。



 季節は何度も巡り、あれから何度目の秋だろう。



「海!」
『空(ソラ)!今バイト終わり?』
「そう。苦学生に何か恵んで」
『この時間だから有り合わせだよ』
「海の飯は何でも美味い」



 10歳も離れた弟だと可愛くて仕方ない。



 そんな可愛い弟だが抜け出せなかった苦しみから救い出してくれた存在の1人だ。



「今日も何事もなく?
『うん。でも部長が今日から変わった』
「大丈夫?」
『大丈夫!』



 空は満面の笑みを見せてくれた。こんな頼りになる存在が近くに居る事は心強く、頑張れる。



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