Love Rose.


「仕事が順調なら、プライベートはどうなのかと聞かれて、いい年なんだし、結婚相手はいないのか、と」


ぅおぅ、ストレート。


「もしいないのなら、喜んで見合い相手を紹介するよ、と」


……え、それは…困る。


「………」


嫌、絶対に嫌。


お見合いなんてしないで。


そう素直に言えればどんなにいいか。


後3年若ければ言えたんだろうか。


急に勢いを無くして、キュッと強くスーツの衿を掴んでいた手の力も弱くなって、さっきまで近くに見えた専務の顔も、今見えるのは二人の靴。


「…結婚については、…したほうがいいかなって、よく考えます、って」


ねぇ、それって、誰と?


貴方が他の人と笑い合う姿なんて、見たくない。


「……すみれさんは、どう思いますか?…結婚、したほうがいいと思いますか?」


………私に聞かないでよ。


自分で好きにすればいいじゃない!


「…ねぇ、すみれさん?」


専務の手が、下へ向けていた顔を優しく上へと誘導する。


必然的に専務と目が合ってしまって。


涙目になっていて限られた私の視界には、キラキラした笑顔を浮かべる専務が映る。


< 12 / 50 >

この作品をシェア

pagetop