Love Rose.
おまけ 1
―コンコン
「はい、どうぞ?」
カチャ
「失礼いたします。…あの、室長…」
「どうしました?」
少し戸惑ったようにも聞こえる声に、資料に目を向けたまま、声を発した人物に問う。
「……随分と、忙しそうですね」
すると聞こえて来たのは、最初に聞こえた声とは似ても似つかない声。
その違和感にハッと顔を上げれば、扉の前で優雅に佇む高城専務。
「…あぁ、さっきの彼女ならもう業務に戻りましたよ」
微笑んでいるのにヒシヒシと感じる威圧感。
専務をここに通した誰かも、大方この威圧感にやられて早々に退散したのだろう。
…けれどそれでは秘書室に配置されている立場の人間として、いかがなものか。
と、思わず目の前の人物から思考がそれてしまった。
そんなところをこの人が見逃すはずかない。
「…資料から顔を離せないほど忙しいとは。疲れていませんか?」
どういう意図だろうか。
「…いえ。問題はありません」
「…そうですか。ならよかった。まぁ、忙しいなら、わざわざ私の秘書に直接話をしに来る時間はありませんからね」
余裕があるんでしょうねぇ。と付け加える専務。
「…はい」
「…そして少しの疲れも、私の秘書に会って癒されたようですし」
「…………はい。そうですね」
「…………なら、今より少しくらい忙しくなっても平気ですね」
ニコッと笑うその後ろに、般若の絵が浮かんでいます。専務。
期待していますよ。と部屋を出て行った専務。
「……はぁ」
ものすごい疲労感。
一番敵に回したくない人。
つくづくそう思う。
おまけ 1 end.