雪の果ての花便り
柚とは高校1年生からの付き合いになる。ということは今年で6年目。
柚がこんなにも私の色恋沙汰に首を突っ込むのは、過去の恋愛のせいだろうと思う。
振り返るとさまざまな思い出を語れるように、私と柚は互いの恋愛がどんなものだったかを知り尽くしている。
私は短大に入ってから10ヵ月ほど、当時の彼氏と同棲していた。
実家に帰っている間に女の子を連れ込まれ、あっけなく終わった恋。
別れた理由を誰に話しても泣かなかった。終わったものにいつまでも囚われる私ではなかった。
代わりに柚が怒り、泣いて、囚われたと言っても過言ではないのかもしれない。
「アンタが幸せじゃないと落ち着かない」
もみ消された煙草を見ながら思い返す。
別の女の子を選んだ彼を引き摺った覚えはないけれど、傷をつけられたのは確かだと思う。だからこそ柚は私の新しい恋を応援してくれた。美空さんがフランスに行くと知った今も、私の背中を押そうとしてくれている。
「アンタはまだ、人を家に招くのが苦手なんでしょう。自分の家で誰かとふたりきりになるのが、怖いんじゃないの? たった1日早く帰ったら、アイツが女を連れ込んでいたのをその目で見たから」
「もう平気だよ」
「どうだか。あたしはアンタの家に泊まってガールズトークを繰り広げるか、アンタが美空さんと一緒に暮らすまでは安心できないってことを頭に叩き込んでおいて」
「……わかった。柚を泊めることだけは、考えておく」
「あたしが尾行する日も近いね」
空になったコーヒーカップをゴミ箱に投げた柚は恐ろしいことを言う。
でも尾行なんかしなくたって、泊まりにきてもいいよ。
そう伝えることは、私がひとり暮らしに戻ってからでなければ無理かもしれない。