王子様×2の事情
(ほぼ強制)初出勤
まるで大きな城についてあるそれのような門の先を見るのは、
ずっとその隣に住んでいた17年間で初めてのことだった。
まるで異国。
自分の住んでいるこの街から海を渡って、ずうっと遠く離れた国の宮殿みたいな。
とにかく、すごい。
今まで自分が何も知らずにあほヅラを引っさげて暮らしていたことを思うと、
何とも言えない虚しさとジリジリとした恥ずかしさが込み上げて来た。
そうしていると、きっと私のためだけに開けられたのであろう門がゴゴ、と重厚な音を立てながら閉まって行く。
その様子にまた圧倒されて溜め息を漏らす私にクスリと小さく口元を緩めたのは、優しげな初老のおじいさんだった。
おじいさん、というには何だか違う気がして、私は内心首を傾げる。
白い髭は綺麗に整えられ、燕尾服に包まれた長身の身体はほっそりと引き締まっているのが見て取れる。
何ていうのかな。
ジェントルマン?
まさしくそんな感じ。
きっと昔はさぞイケメンだったのだろうと思わせられる。
そしてこのジェントルマンこそが、このお城のようなお屋敷の総てを仕切る執事長である瀬戸さんだ。
「緊張しておいでですね」
優しい声色でそう言われて、私は一層体を縮こませた。
当たり前だ、こんなの。
こんな、突然、非日常な所に連れて来られて。