王子様×2の事情
そして時は再び遡る。
「おとなり……って、あの?」
「そう、そう」
何度も頷く両親に私は某然とする。
「……何で急に?」
「お父さんの会社の社長さんがなぁ…ちょっと取引先でやらかしちゃって、それでそのご機嫌を取り戻そうとして何かできることはないか聞いたらしい。
そしたら、その会社の本社の社長さんの家のお手伝いさんを一人、紹介して欲しいと…….」
お父さんがボソボソと話し出した内容は摩訶不思議だった。
「……そんな社長同士のゴタゴタが、何でお父さんに関係あるの?」
万年平社員のお父さんに。
とはさすがに口には出せずに、心の中で付け足しておく。
「いやぁ、こう見えてもお父さん、社長とは二十年来の友達でね、まぁ今の会社にもそのコネで入ったようなもんなんだが」
「そんな話聞いてないんだけど」
「娘に話す話でもないかなと思ってな…。その社長がな、まぁ由宇夜の存在を知ってるから、どうしても頼むと、言われて……。
昔の恩もあるし、どうしても断れなくて……」
「その謝礼は?」
「部長に格上げ」
「…そんなとこだろーと思った」
つまり、娘を出しにして出世しやがった訳である、この親父は。