王子様×2の事情
アルバイトのお誘い
高校二年の夏休み初日。
耳をふさぎたくなるような大音量でセミたちは朝っぱらから合唱し続けていた。
窓を閉めていてもまるで意味をなしていないように感じられる。
私はクーラーの温度をもう一度下げようと身を乗り出した。
「由宇ちゃん、バイトしたいって言ってたわよねっ」
ピ、と鳴ったであろうその電子音は見事にこの甲高い声に掻き消される。
お母さんにリビングに来なさいと言われたかと思えば、その話をしたかったのか。
お父さんまできちんと向かいの椅子に座っている。
「うん、まぁ……」
そんな話もしたかもしれない。
しかしあまりにも以前のことすぎてうろ覚えである。
しかしその曖昧な返事を聞いた両親は突然目を輝かせた。
「そうよねっ!そうよねっ!
だからね、パパがね、由宇ちゃんのためにいい職場見つけてくれたみたいなのよ!」