奴隷戦士


「じゃ、また明日」


洗ったものは皆と同じ場所に干し、そう言って彼らと別れ、帰路についた。


寺に着くと、鷹介が腕を組んで待っていた。


「遅い」


彼の口調は少し怒っていた。


「おっさまが心配しとる」


「…ごめん」


彼はそれだけ言うと、踵を返し、どこかへ行ってしまった。


いなくなって心配するのは、鷹介だけだと思っていた。


「…周りを見なさいよ。暗くなる前に戻っておいで」


おっさまは、おかえりと言った後にぼくにそう言った。


「3日に1回はお経の時間もとること」


「…………」


今更なにをぼくに伝えたいというのだろうか。


今までぼくに指示などしてこなかったのに。


どうしてなんだろう。


おっさまの部屋から出ると、鷹介が待っていた。


「……てっきり、寝ているのかと思った」


鷹介は部屋に戻ったのだと思っていた。


まさか外で僕を待っているとは思わなかった。


黙ったまま彼は腕を組んで、険しい顔をしてぼくを見ていた。


「…無事でよかった」


彼はそう言い、ぼくに抱きついた。


線香のにおいがする。


「ほんまに、どっか行ってしまってもう帰ってこんのかと思った」


大きく息をついて、ぼくを抱きしめる両腕に力が入った。


鷹介がこんなことをするとは珍しい。


よほどぼくが帰ってこないことが心配だったのだろうか。


「ごめん…ただいま」
< 14 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop