奴隷戦士
「じゃ、また明日」
洗ったものは皆と同じ場所に干し、そう言って彼らと別れ、帰路についた。
寺に着くと、鷹介が腕を組んで待っていた。
「遅い」
彼の口調は少し怒っていた。
「おっさまが心配しとる」
「…ごめん」
彼はそれだけ言うと、踵を返し、どこかへ行ってしまった。
いなくなって心配するのは、鷹介だけだと思っていた。
「…周りを見なさいよ。暗くなる前に戻っておいで」
おっさまは、おかえりと言った後にぼくにそう言った。
「3日に1回はお経の時間もとること」
「…………」
今更なにをぼくに伝えたいというのだろうか。
今までぼくに指示などしてこなかったのに。
どうしてなんだろう。
おっさまの部屋から出ると、鷹介が待っていた。
「……てっきり、寝ているのかと思った」
鷹介は部屋に戻ったのだと思っていた。
まさか外で僕を待っているとは思わなかった。
黙ったまま彼は腕を組んで、険しい顔をしてぼくを見ていた。
「…無事でよかった」
彼はそう言い、ぼくに抱きついた。
線香のにおいがする。
「ほんまに、どっか行ってしまってもう帰ってこんのかと思った」
大きく息をついて、ぼくを抱きしめる両腕に力が入った。
鷹介がこんなことをするとは珍しい。
よほどぼくが帰ってこないことが心配だったのだろうか。
「ごめん…ただいま」