奴隷戦士
「さぁ…飲んでいないのはもう君たちだけだが?」
目の前に白ひげが立っていた。
白ひげは「死ぬか?」と目で言っていた。
目の前には死んだ子ども、体の一部を失いながらも生きている子ども、白ひげに殺された子どもが倒れていた。
こんな状況で飲めるわけがない。
「クソッタレ!!!」
クルトが叫んだ。
「クルト!!?」
瞬間、彼は花緑青色の液体を飲み干した。
「う゛」
すぐにしゃがみこみ、頭を押さえた。
そして、彼がごほっと咳をすると、大量の血が口から出て行った。
その拍子に地面に倒れた。
「クルト!!!」
彼に駆け寄って腕をつかむと、異常なほど熱かった。
「っ」
思わず手を放してしまうほど。
「おい、クルト!!!」
ジルが叫ぶが、クルトは目をいっぱいに開いてどこを見ているのか、分からない。
「しろ…じ、る……」
仰向けになってどこを見ているのか分からない顔で、泣きながらぼくとジルの名前を呼んだ。
そして動かなくなった。
「クルト!!?」
「おい、クルト!」
そんな、嘘。
何度叫んでもクルトは宙を見ているだけで、全然ジルやぼくを見てくれなかった。
出会って間もないけれど、不安を和らげてくれた彼の存在は大きかった。
「さぁ、お友達は飲んだぞ。勇敢だったな」
白ひげは言った。
こんな状況を見て、飲めるわけがない。
ジルと目が合った。
決意していた目だった。
「くそっ」
ジルとぼくはほぼ同時に、その花緑青の液体を飲んだ。
「っあ!!!」
舌が熱い。
液体が通っていく道が熱い。
まるで火を飲んでいるよう。
立っていられず、地面に膝をつけ、のどに手を当てる。
「ああぁぁああっ」
のどが熱い。
頭がガンガンする。
指先から体温が失われていくようで。
体を動かすたびに激痛が走る。
涙が出ていくと思ったら、血だった。
なんで、ぼくがこんな目に。
隣でジルが動かなくなっていた。
その近くに割れた試験管があった。
「ちくしょ…!」
花がいなくなった世界で、生きる意味もない。
だけど、死ぬ理由もない。
むしろ、彼女から生きろと言われたのに。
こんなところで死んでたまるか。
割れて先がとがった試験管を近くにいた白ひげの目に思いきり刺す。
白ひげが悲鳴を上げて、手で目を覆う。
その手の間から血がしたたり、落ちていった。
体が痛いとか力が全然入らないとか、のどがとても痛いとか、体内が焼けているのかとか、もうどうでもよかった。
恐怖で凍り付いている白ひげを見て笑う。
ざまぁみろ。