奴隷戦士


血だらけになった彼女を、ザクロの部下が抱きかかえ、肌が黒い彼と一緒にこの大きな部屋から出ていった。


彼の傷は、彼女にもぎ取られた腕も、頬の肉も、ぼくが殴って傷つけたところも、なくなっていた。


彼がこの部屋から出ていく前、彼は何か、言いたそうな表情をしてぼくを見ていた。


その表情が、どうして悲しんでいるように見えたのか、ぼくにはわからなかった。


「ぼくは…」


なんのために、ぼくは連れてこられたのだろうか。


彼らを傷つけるため?


花ちゃんにもらった、この蓮で?


自分が嫌になる。


「…………っ……」


いっそのこと、このまま自分で自分を刺して、死んでしまおうと考えた。


だけど、ぼくにはそんな勇気もなかった。


それに、彼女はぼくに「生きろ」と言った。
< 56 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop