奴隷戦士
「……………………」
ウソンは自分が使った剣をじっと見ていた。
「あぁ、どうだったか、その剣は」
ヤンはイーヴォの部下が作った新作だ、と腕を組んだ。
「ふーん…前作ったやつの改良版か。そういや前は聞いてなかったな。これ、なんて名前?」
彼は持っている剣をじっと見つめ、ヤンに聞いた。
「松葉牡丹(マツハボタン)。花言葉は可憐、無邪気、かわいさ、さやわか」
「…へぇ」
彼はその刀を一瞥した。
「軽くて使いやすいが上に、見た目が可愛い。だが、強度にかける。僕には合わねえ」
彼はそう言ってヤンに松葉牡丹を渡した。
確かに、切っ先が少し欠けていて、刃こぼれしていた。
「10体も倒さぬうちにこっちのほうが折れる。このままじゃ任務に出ても役に立たねえ。俺が死ぬ」
ウソンは眉間にしわを寄せたまま、ヤンに松葉牡丹と呼ばれた剣を渡した。
「さすが。慣れている者は違う」
「うるせえ。見てたのなら分かるだろ。全力でいっても傷が浅い。首が飛ばねえ。いちいち死んだかどうか確認してやってたら、何十体と襲われたとき、確実に死ぬ。あと、脳天突いた時に切っ先が欠けた。そして滑りも悪い。顎まで切っ先が出なかった」
「ウサギが強化されたとは思わんのか?」
「思わねえな。強化されたときの印がないし、興奮しているようでもなかった。ぼくを甘く見るなよ」
ウソンはまるで、ぼくの存在なんてないかのように振る舞い、それだけ言うと踵を返した。
「きちんと見たか。あれがおまえがこれから戦っていく相手だ」
ぼくは先ほどのウサギと呼ばれたあのチーターのような動物の姿が忘れられなかった。
剣で切り付けたら黒い血が出るのに、絶命するとなると灰になってしまうなんて。
そんな動物がこの世に存在していた事実に驚愕した。
「ふむ……」
彼はどこからか取り出した木刀をスパンッと松葉牡丹で斬った。
「木刀は斬れるんだがな…ふむ……」
え。
木刀は斬れるのに、あの獣の皮膚を傷つけるのに、刃こぼれしたっていうの…。
それをさも当然として話をしているウソンとヤンだった。
それをのちのち、ぼくが倒すだなんて。
そんなの、人がやることなのだろうか。
ここは、一体なんのためにあの動物を倒すところなんだろう。