奴隷戦士


事の発端は、彰太郎がぼくより体が弱い子に叩いたり、殴ったり、彰太郎たちがする、洗濯の仕事をさせたりしていた時、ぼくが庇ったからだった。


でも、もともと体が弱かった彼は、彰太郎達につけられた傷と持病で冬を越せずに死んでしまった。


「あんたら、お風呂沸いたよ」


鷹介に擦れた肘を水で洗ってもらっている時、お手伝いさんが言った。


「あ、うん。ありがとう」


彼女にそう言って、しゃがんでいた鷹介は立ち上がった。


「紐紫朗」


ぼくはお手伝いさんに名前を呼ばれて、まだ滲んでいる視界を動かす。


ぼやけているおばあさんが目に映った。


「西にある道場を訪ねてみなさい」


お手伝いさんの目は真剣だった。


道場?


道場って体を鍛える場所のこと?


「どうして?」


「それは一番自分が分かってるはずよ」


なぜ僕に道場を勧めるのか、はっきり言わない彼女はそう言って、すこし悲しそうに微笑んだ。
< 6 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop