奴隷戦士
そのあと、ぼくはヤンに連れられ、白一色で染められた長い無機質な窓のない廊下を歩き、とある部屋の前についた。
彼が扉を開けると、そこにはぼくと同じ背丈の子どもが30人くらい規則的に並べられた椅子に座っていた。
全員がこちらを向き、注目を浴びる。
見たところ、ジルやクルトはいなかった。
辺りを見渡すと、並べられた長い机に椅子があり、彼らはそこに座ってぼくを見ていた。
何か不思議な匂いがして、そちらをたどれば部屋の隅に長い机があって、その上には食べ物らしきものが置いてあった。
大皿にたくさんの食べ物があり、その机の両端に食器がある。
自由に取って食べるものなのだろう。
現に、何人かがぼくを見ながら食べていた。
窓らしきものはあるが、閉じられ、外の様子は分からない。
不思議と寒くはなかった。
「今日からここで一緒に暮らす仲間だ。まだ初めてのことが多いからたくさんおしえてやってくれ」
ヤンがそう言い、ぼくの背中を押した。
さぁ、おまえはここで生活するのだと言わんばかりに。
その30人の中にはウソンと呼ばれていた男の子もいた。
「あぁ、お前、あの時の」
差し出された手を見て、困惑していると彼が、手の甲と手の甲をあわせるんだと教えてくれた。
「なるほど、最初の最初から教えねえといけないってわけか」
「お前も来たときはこんな感じだったぞ」
「え、こんなに目つき悪くて、ちんちくりんだったの!!?」
ぼくの周りには、あっという間にひとが群がっていて、初めて花のところへ行って囲まれたときのことを思い出した。
…花。
じわっと、涙が出て、寂しい気持ちになる。
「泣いてる…うん。泣いてすっきりして。じゃなきゃここではやっていけない」
「おお、泣き虫のお前が言うのか」
「まぁ、泣いてもやってられないんだけどね~あはは」
「闇深…」
周りがわいわい騒ぐ中、その音はどんどん遠ざかっていき、耳になにか詰め物をしたように、くぐもって聞こえていく。
反応がないぼくを見て、ウソンが何か言っているけれど、何を言っているのかは分からず、目の前が暗くなった。
立っていられない。
周りの人たちが何か言っているが、分からなかった。