奴隷戦士
「どうしたの。そんな恰好で。寒くないの?これ着なよ」
今まで見たことのない月に目を奪われていると、驚いた声音がぼくをつつんだ。
「ぼくはフィーネ。君は?」
存在が真っ白な雪のような青年に、ぼくは言葉が出なかった。
銀色の髪に黄色い虹彩、白い肌に白銀のまつ毛。
ぼくと肌の色が違うことよりも、その存在の美しさに目を奪われた。
漆黒の闇に浮くさっき見た綺麗な月を思わせる存在。
「今日は寒いねえ」
そう言い、ぼんやりしているぼくを気にせず、自分が着ていた暖かそうな、ふわふわした白い服を僕に着せた。
ぼくより少し大きい体から何かよく分からないが、とてもいい匂いがした。
彼の服からはおしくらまんじゅうをしていたときのような、人の温かさを感じさせた。
かるい素材なのにとても暖かい。
「…花ちゃん……」
今更それを理解したようで、涙が止まらなかった。
もう彼女と一緒にいることもない。
もう道場の仲間と鍛錬することもない。
もう彼女の言葉を聞くこともできない。
もう道場の仲間と遊ぶこともない。
もうぼくには蓮と円谷の流派しか残っていない。