奴隷戦士



「あぁ、探したよ」


自分の部屋に戻る途中で、ザクロに出会った。


なんとなくフィーネが誰かに似ていると思ったら、ザクロだと気づいた。


ザクロの黒髪を白色に変えて、色素を薄くしたらフィーネにそっくりだと思う。


「こっちへおいで。他のみんなはもう来ている」


ザクロに連れられ、広い部屋につくと、そこにはウソンもいて、ほかのひとたちもいた。


ぼくを入れてちょうど15人だった。


ウソンを先頭に、一列に並んでいて、ぼくは最後尾だった。


「さぁ、全員そろったね?それではこれから配る栄養剤を飲んでくれ」


ザクロが言うと、そばにいた白衣を着た人たちが、ぼくたちに紫色をした液体が入った透明な湯呑を手渡す。


妙な緊張感があった。


彼らはその湯飲みを神妙な面持ちで見ていた。


「全員にいきわたったね?では、ウソンから飲んでくれ」


ウソンはその指示に従い、湯呑の中の液体を飲み干した。


「あ、ブドウの味」


それを聞いて、途端に空気が軽くなった。


「では次、ナンシーから順に飲んでくれ」


ザクロが指示して、ナンシーが飲んだ途端に彼女がせき込んだ。


隣にいた子が介抱しようとするも、白衣を着た人がそれを制止し、湯呑の中身を飲むよう指示した。


「っは」


急にウソンが吐血し、続いてナンシーも倒れた。


緩んだ空気が一気に張りつめた。


ぼくがいるところではよく見えなかったが、ウソンが痙攣しているように見えた。


一瞬、クルトやジルたちのことが頭をよぎった。


大丈夫、彼らは生きていると、ザクロが言っていた。


大丈夫、ウソン達も死んではいない。


「だいじょう、ぶ」


無意識に言葉にしていたのを隣の人に聞かれたのか、隣の人がぼくをじっと見ていた。


とてもやせ細っていて、足が体重を支えるのも時間の問題ではないかと思うほど、病的な痩せ方だった。


「これが最後かもしれないから言っておくね。ぼくの代わりに生きて、ウサギをこの世から無くして」


彼の腕には注射の痕がたくさんあり、クマができていて、目には生気がないように見えた。


彼の隣の人はずっと、死にたくないと連呼していて、その更に隣からは呻き声やなき声や悲鳴が聞こえるのに、何もしない大人がいるこの空間がとても異様だった。


隣の彼はその紫色の液体を飲むと、のどに手を当て胃液を吐いた。


ぼくもその液体を飲むと、胃の中で何かが暴れて、何かが食道をわたって口の中であばれ、外へ出た。


その何かはぼくの血と体液で、それを見た途端、その量の多さに気が遠くなった。
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