奴隷戦士
*
布団の上でぼうっとしていた。
ウソンが部屋に入ってきてから、ようやく朝が来たのだと理解した。
大部屋に行って前と変わらない食べ物を取ろうとしたが、食べ物の匂いがした途端に胃から何かがこみ上げてくる感覚がして、走る力もなくその場で吐いた。
口から透明な液体が出て行くが、胃の不快感はぬぐいきれない。
部屋にいた子たちが慌てて布巾と洗面器のような容器を持って、その中に吐けと言う。
ウソンはぼくの背中をずっとさすり、容器に入った水を渡され、飲み干しては吐き出し、それを何度か繰り返した。
喉がヒリヒリするのを水を飲んで紛らわす。
そうして落ち着いた頃、自分がぐったりとして壁にもたれかかっていることに気づいた。
そういえば、報告書を書かなければならないなと、ぼんやりした頭で何を書くが考える。
無謀だと言うキララと一緒にしぶしぶウサギの巣へ行き、フィーネは気絶、名を知らない子は死に、ぼくとキララだけで倒した。
その事実を思い起こすだけで、自分が彼を見殺しにしたと突きつけられる。
じゃあぼくは一体どうすればよかったの。
「お前、大丈夫か」
ウソンがぼくを覗き込み、泣くなよと言いながら自分の服でぼくの涙を拭いた。
その後、ウソンに言われて少し寝て、報告書を書き、提出した。
その帰り道、突然、怒号が廊下を包んだ。
声がした方向を見ると真っ赤に顔を染め上げた研究員が立っていた。
手には何か紙を持っている。走ってきたのか、髪はあっちこっち変な方向へ流れ、額にうっすら汗が滲んでいる。
小さく息を荒げ、ぼくを睨んでいる。
彼は無言でぼくに詰め寄り大きく息を吸い込んだ。
「この役立たずが!」
大きな声に身がすくんだ。
血走った目をした研究員はぼくの胸ぐらを掴んで、唾を散らしながら怒鳴る。
「ウサギを殲滅するどころか、生け捕りもできねえのか!おまけに負傷して戻ってきやがって!挙げ句の果てには死んでいるやつがいるだと?この役立たずどもめ!今すぐにウサギを捕獲してこい!」
「ちょっ、あんたなにやってんの!」
どこからかキララが制止した。
足に力が入らず、宙ぶらりんになっているぼくを見て、すぐさま止めに入るが、研究員はぼくを片手で掴み持ったままキララの方へ投げつけた。
ぼくは投げ出された槍のようにキララに衝突し、キララは壁に背をぶつけた。
体のあちこち色んなところが痛い。
「このクッソ…」
下から声がした。
ぼくの体がキララの上に乗っかっていた。
床に今しがたできたであろう血の痕がある。
あわてて退いて、彼女の容態を確認する。
綺麗な顔は般若のごとく変化し、鼻から血が出ていた。
自分の喉がヒュッと鳴ったのが分かった。
「なにをボサッと突っ立っている。さっさとウサギを採ってこないか!」
研究員がぼくの胸ぐらをもう一度掴んで、また同じように立たせようとするのを、キララが阻止し、足払いをした。
そして体勢をくずした研究員の右肩を右足で踏み、背中と後頭部が地面に着くよう押しのける。
ドンという音と共にキララが研究員の顔の真横の床を勢いよく踏みつけ、息を吐く。
角度的に彼女の顔はこちらからはよく見えない。
でも、キララは右手をぎゅっと握りしめ、怒っていることは確かだった。
「あんたいい加減にしなさいよ」
それはさながら鬼のような地を這う声だった。
布団の上でぼうっとしていた。
ウソンが部屋に入ってきてから、ようやく朝が来たのだと理解した。
大部屋に行って前と変わらない食べ物を取ろうとしたが、食べ物の匂いがした途端に胃から何かがこみ上げてくる感覚がして、走る力もなくその場で吐いた。
口から透明な液体が出て行くが、胃の不快感はぬぐいきれない。
部屋にいた子たちが慌てて布巾と洗面器のような容器を持って、その中に吐けと言う。
ウソンはぼくの背中をずっとさすり、容器に入った水を渡され、飲み干しては吐き出し、それを何度か繰り返した。
喉がヒリヒリするのを水を飲んで紛らわす。
そうして落ち着いた頃、自分がぐったりとして壁にもたれかかっていることに気づいた。
そういえば、報告書を書かなければならないなと、ぼんやりした頭で何を書くが考える。
無謀だと言うキララと一緒にしぶしぶウサギの巣へ行き、フィーネは気絶、名を知らない子は死に、ぼくとキララだけで倒した。
その事実を思い起こすだけで、自分が彼を見殺しにしたと突きつけられる。
じゃあぼくは一体どうすればよかったの。
「お前、大丈夫か」
ウソンがぼくを覗き込み、泣くなよと言いながら自分の服でぼくの涙を拭いた。
その後、ウソンに言われて少し寝て、報告書を書き、提出した。
その帰り道、突然、怒号が廊下を包んだ。
声がした方向を見ると真っ赤に顔を染め上げた研究員が立っていた。
手には何か紙を持っている。走ってきたのか、髪はあっちこっち変な方向へ流れ、額にうっすら汗が滲んでいる。
小さく息を荒げ、ぼくを睨んでいる。
彼は無言でぼくに詰め寄り大きく息を吸い込んだ。
「この役立たずが!」
大きな声に身がすくんだ。
血走った目をした研究員はぼくの胸ぐらを掴んで、唾を散らしながら怒鳴る。
「ウサギを殲滅するどころか、生け捕りもできねえのか!おまけに負傷して戻ってきやがって!挙げ句の果てには死んでいるやつがいるだと?この役立たずどもめ!今すぐにウサギを捕獲してこい!」
「ちょっ、あんたなにやってんの!」
どこからかキララが制止した。
足に力が入らず、宙ぶらりんになっているぼくを見て、すぐさま止めに入るが、研究員はぼくを片手で掴み持ったままキララの方へ投げつけた。
ぼくは投げ出された槍のようにキララに衝突し、キララは壁に背をぶつけた。
体のあちこち色んなところが痛い。
「このクッソ…」
下から声がした。
ぼくの体がキララの上に乗っかっていた。
床に今しがたできたであろう血の痕がある。
あわてて退いて、彼女の容態を確認する。
綺麗な顔は般若のごとく変化し、鼻から血が出ていた。
自分の喉がヒュッと鳴ったのが分かった。
「なにをボサッと突っ立っている。さっさとウサギを採ってこないか!」
研究員がぼくの胸ぐらをもう一度掴んで、また同じように立たせようとするのを、キララが阻止し、足払いをした。
そして体勢をくずした研究員の右肩を右足で踏み、背中と後頭部が地面に着くよう押しのける。
ドンという音と共にキララが研究員の顔の真横の床を勢いよく踏みつけ、息を吐く。
角度的に彼女の顔はこちらからはよく見えない。
でも、キララは右手をぎゅっと握りしめ、怒っていることは確かだった。
「あんたいい加減にしなさいよ」
それはさながら鬼のような地を這う声だった。