奴隷戦士
結局その後、研究員の悲鳴を聞きつけたザクロたちが仲裁し、仲直りをするためにウサギを取ってくることで落ち着いた。
といっても、こちらが悪いから研究員の要望通りウサギを捕獲してこいという一方的な命令だった。
キララと一緒に目的地に向かって走っていると、ふと息が上がっていないことに気づいた。
少なくとも今までのぼくであったなら、すぐに息が上がって途中で歩いていた。
これがヤンと二人きりで殺し合いをしていた成果なのかどうかは知る由もない。
目的の場所に着くと、それを待っていたと言わんばかりにウサギが襲いかかってきた。
施設を出る前にイーヴォと出会い、その時に託された剣を鞘から抜いて、ウサギの急所を狙う。
自分の体重にその剣の重さを上乗せさせて、ウサギの脳天にズプリと奥深くに剣を突き刺すところで、ウサギが急に体の向きを変え、行き場をなくした切っ先はウサギの耳を掠めただけで地面に思い切り身を沈める。
「あ」
思ったより深く突き刺さり、抜くのに時間がかかりそうだ。
すぐに抜こうとしたところで、ウサギの尻尾がぼくを薙ぎ払い、岩に激突する。
「はっ」
一瞬、息が止まった。
尻が地についたところで、肺いっぱいに空気を満たし、体勢を整えようと片膝を立てたところで、ウサギの大きな影がぼくの頭上から降ってきた。
目の前にはぼくを引き裂こうとウサギのするどい爪が迫っていた。
足が動かない。
まるで金縛りにてもあったかのよう。
あ、死ぬ。
直感した。
でも、あの施設じゃない場所でぐちゃぐちゃになるのなら、今度こそ死ねるんじゃない…?
そう思うと別に体が動かなくても問題ない。
完全に動きを止めたぼくにウサギがけたたましく鳴いた。
――ひっこんでろ、紐紫朗