奴隷戦士
*
体の痛みで目が覚めた。
背中とお腹が焼けるように痛い。
見ると肉が裂けていた。
血が溢れるほど深く傷ついていないが、滲むほど浅いわけでもない。
一体何があったんだ。
いつ自分が眠ってしまったのかも分からない。
寝ている間にこんなに怪我するのか。
自分の寝相の悪さに驚いた。
「また派手にやられたわねえ、大丈夫?まぁ、ものの数分で治癒するでしょ」
キララが牢屋の外にいた。
何か手に持っている。
というより、彼女はぼくと一緒にこの牢屋の中に入れられなかったか。
「あぁ、これ?抜け出してもらってきた。お腹空いたでしょ」
手に持っていたのはパンだった。
ぼくに渡したあと、彼女は手ぶらになった手でぼくが閉じ込められている牢屋の出入り口の扉を引っ張った。
すると、すっぽりと取れた。
「えっ」
よっこいしょ。
彼女は今度はぼくがいる場所へ足を進め、牢屋の中に入る。そうしてまた扉をもとの場所へ戻し、何事もなくパンを食べはじめた。
すぐさま自分の頭の中で疑問符がたくさん爆走していく。
待て、考えればわかる、きっとそうだ。
彼女は牢屋の外に行っていた。
扉をすっぽ抜いて、戻して、外へ行く。
そして、戻ってくる。
なんで?
やはりよく分からなかった。
「ん?」
視線に気づいたキララがパンを食べながらぼくを見る。
「何がどうなっているの…」
呟いたぼくを見てキララが吹き出した。
「簡単なことよ、細工したの。外れやすいように」
説明してもらい、実演してもらったが、やはりよく分からなかった。
なるほど、分からん。
そうつぶやくとキララが耐えきれずまた吹き出した。
「あら?アンタその傷、まだ治らないの?」
彼女が背中とお腹にできた傷を見て、眉間にしわを寄せた。
「おかしいわね、ここでウサギと戦う子たちはもれなく全員、細胞が損傷すると超速再生する機能がついているはずなのに」
キララの目線がぼくの手の中にあるパンに移る。
「それ食べないの?」
「食欲なくて」
「いつから?」
「いつからだろ…」
まともに食事をとった日はいつだ。
今日の朝は食べれなかった。
昨日の夜も食べれなかった気がする。
昨日の昼は食べてない。
昨日の朝も食べていない。
…それより前は?
ヤンと二人で戦っていた時はごはんを食べることすら忘れていた。
背筋が凍る。
いつから食べていない?
「それ食べれる?」
心配した、というより訝しんでいた。
パンを口に入れるだけ。
たったそれだけなのに、できない。
口の中にある唾液すら、不快に感じる。
どこからともなく飛んできたハエが、ぼくが持っているパンに止まった。
胃からせり上がってくる猛烈な吐き気に耐えられず、立っていられなかった。
両手で口をふさぐが吐瀉物が手の端からこぼれていく。
なにもない、酸い臭いの透明な液体だった。
食べようとするのに、食べられない。
自分の体が信じられなかった。
「どうしてそんなに死にたいの」
彼女のその言葉に、世界が止まった。
体の痛みで目が覚めた。
背中とお腹が焼けるように痛い。
見ると肉が裂けていた。
血が溢れるほど深く傷ついていないが、滲むほど浅いわけでもない。
一体何があったんだ。
いつ自分が眠ってしまったのかも分からない。
寝ている間にこんなに怪我するのか。
自分の寝相の悪さに驚いた。
「また派手にやられたわねえ、大丈夫?まぁ、ものの数分で治癒するでしょ」
キララが牢屋の外にいた。
何か手に持っている。
というより、彼女はぼくと一緒にこの牢屋の中に入れられなかったか。
「あぁ、これ?抜け出してもらってきた。お腹空いたでしょ」
手に持っていたのはパンだった。
ぼくに渡したあと、彼女は手ぶらになった手でぼくが閉じ込められている牢屋の出入り口の扉を引っ張った。
すると、すっぽりと取れた。
「えっ」
よっこいしょ。
彼女は今度はぼくがいる場所へ足を進め、牢屋の中に入る。そうしてまた扉をもとの場所へ戻し、何事もなくパンを食べはじめた。
すぐさま自分の頭の中で疑問符がたくさん爆走していく。
待て、考えればわかる、きっとそうだ。
彼女は牢屋の外に行っていた。
扉をすっぽ抜いて、戻して、外へ行く。
そして、戻ってくる。
なんで?
やはりよく分からなかった。
「ん?」
視線に気づいたキララがパンを食べながらぼくを見る。
「何がどうなっているの…」
呟いたぼくを見てキララが吹き出した。
「簡単なことよ、細工したの。外れやすいように」
説明してもらい、実演してもらったが、やはりよく分からなかった。
なるほど、分からん。
そうつぶやくとキララが耐えきれずまた吹き出した。
「あら?アンタその傷、まだ治らないの?」
彼女が背中とお腹にできた傷を見て、眉間にしわを寄せた。
「おかしいわね、ここでウサギと戦う子たちはもれなく全員、細胞が損傷すると超速再生する機能がついているはずなのに」
キララの目線がぼくの手の中にあるパンに移る。
「それ食べないの?」
「食欲なくて」
「いつから?」
「いつからだろ…」
まともに食事をとった日はいつだ。
今日の朝は食べれなかった。
昨日の夜も食べれなかった気がする。
昨日の昼は食べてない。
昨日の朝も食べていない。
…それより前は?
ヤンと二人で戦っていた時はごはんを食べることすら忘れていた。
背筋が凍る。
いつから食べていない?
「それ食べれる?」
心配した、というより訝しんでいた。
パンを口に入れるだけ。
たったそれだけなのに、できない。
口の中にある唾液すら、不快に感じる。
どこからともなく飛んできたハエが、ぼくが持っているパンに止まった。
胃からせり上がってくる猛烈な吐き気に耐えられず、立っていられなかった。
両手で口をふさぐが吐瀉物が手の端からこぼれていく。
なにもない、酸い臭いの透明な液体だった。
食べようとするのに、食べられない。
自分の体が信じられなかった。
「どうしてそんなに死にたいの」
彼女のその言葉に、世界が止まった。