奴隷戦士
教師は客間にいた。
歩いて来たのか、はたまた、暑さにものすごく弱いのか、彼は汗をかいていた。
上着を脱いで、扇子を出して扇いでいる。
今日そんなに暑いか?とは思ったが、これはまたとない絶好の日だと思った。
汗で着ている物の色が変わるくらい、ビッシャリしている彼を、ぼくは適当な理由をつけて池におびき出す。
途中で不自然ではないように鷹介も加わった。
「おぉ、ここは風が吹いていて気持ちいね」
「でしょう?それに鯉も見れていいでしょう?」
なんて適当な会話をしながら。
「あ、そうそう。そう言えば鯉が生まれたんですよ、ほらあそこ」
「え、どこ!?」
鷹介がちらつかせたエサにまんまとかかった教師。
ぼくは背伸びをしてその生まれた鯉とやらを必死に見ようとしている彼の背中に、思いきり体当たりした。
どんっ、という大きな音がして、うわっという声と、バシャンッという音が聞こえた。
「うわはははははははは!!」
「あははははははははは!!」
なんとも間抜けな態勢をして、キョトンとしている彼を見たぼくらは、笑わずにはいられなかった。
そして二人で大笑いしながら全速力で逃げた。
まぁ、そんなことしたのは直ぐバレて、お手伝いさんにこってり絞られたんだけど。
お手伝いさんに思いを寄せる男性からです。
って、いう偽の手紙を渡してバレて、まだ三日くらいしか経ってなかったから、白羽の矢が立つのは当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないけど。
因みに、前回は鷹介が言い出したことで手紙の内容は「う〇こ」をでかでかと書いただけの、単純なものだった。
だけど、あんなことをやったら鯉もびっくりするし、キョウシも頭ぶつけて死んじゃうかもしれないとお手伝いさんに言われた時はギクリとした。