奴隷戦士
*
そうして、キララと長髪の人は他の場所へ行き、ぼくとフィーとファイとそのほかの子たちは武器庫へと足を進めた。
ぼくとファイで武器庫の管理人に話をつけ、強引に武器庫を開けさせ、彼を気絶させて、フィーたちを呼ぶ。
全員が持ったのを確認したところで、武器庫から最初に出たファイが廊下の壁へと吸い込まれていった。
「え」
瞬きの間のことで、理解が追い付かないが、なにかとても恐ろしいことが起きていると直感した。
目の間には奇妙な服を着た人が一人立っている。
「逃げてッ!」
フィーがぼくを武器庫から出るように背を押し、誰かから取った槍を奇妙な服を着た人に向けて投げる。
それを期にぼくは廊下に向かって走り出す。
逃げながら銃やダイナマイトを放り投げ、折ってこられないように攻撃を仕掛ける。
ぼくは自分の持っている剣をぎゅっと握った。
「今の、プロヴァーレ?」
「来るの早くない?」
「うそでしょ」
どこへ逃げよう。
この先は何がある場所か、分からない。
じゃあどうする?
そう思っても彼らと戦って勝って逃げることしか思いつかなかった。
「こうなったらもうやるしかない」
「はぁ!?プロヴァーレと戦うっていうの?勝てるわけない、あんな化け物」
「じゃ、なにもせずここで死ぬの?」
彼らの声を背景音楽にして、ぼくは周りを見渡した。
やはり窓はない。
と、不意に自分が血まみれになっていることに気付いた。
痛みはない。
風導管の中で腹這いになっていたときに、きっと血が出たんだ。
でも、どうしてこんなにぱっくりと割れた傷で痛々しいのに、全然痛くないんだろう。
「この先は行き止まりだよ!手前の部屋!」
フィーが叫ぶ。
そうだ、彼はここの場所を熟知していた。
敵は一人。
なら何とかなるかもしれない。
「ぼくが引き付ける!みんなは逃げて!」
「シロー!?」
ぼくは走るペースを落とし、体が痛いふりをして後ろから追ってくる人へ近づく。
「逃げようとしたのか?」
「痛い、体が痛い、助けて、ごめんなさい」
奇妙な服を着た人に追いつかれたところで、差し出された手をつかむ。
これは痛そうだと言う彼の目が自分の傷に行ったことを確認して、素早く柄の先を耳の後ろにある突出した場所に思いきりぶつける。
立て続けに顔面に膝をお見舞いする。
それでも起き上がってきそうだったので、斬る。
しかし彼は、ぼくの剣を自分の腕で受け止めていた。
「なるほど、悪くない」
肉が割けて血が出ている。それなのに簡単に押しのけられ、しりもちをつく。
何度挑んでも、同じ結果だった。
彼の攻撃はかわせるものの、こちらの攻撃が一切通じない。
あきらめてフィーが向かった先へと走る。
奇妙な服を着た人は笑いながらぼくを追いかけてきた。
なんで笑ってんの?
何がおかしいの?
彼の理解できない恐怖に身を包まれながら、手前の部屋に入ると、そこは血の海だった。
「え…?」
この部屋に向かったフィーたち全員が倒れていた。
足を切断された子、四肢がない子、首がない子、背中に大穴が合いた子、体が変な方向に向いた子、壁に磔にされた子。
奇妙な服を着た人がフィーの首をつかんでいる。
口から泡が出て、体に力なく虚を見ている。
「どうして…」
口からこぼれてた言葉を音と認識するのと同時に、目の前にいる奇妙な服を着た人がフィーを放り投げた。
咄嗟にフィーのもとへ駆け寄り、お腹にどすんと衝撃がかった。
しっかりと投げ出されたフィーをつかんで地面につかないよう受け止める。
「フィー!しっかり!ぼくを見て!」
彼の両頬をつかみ、目を見るが、変わらず何も映さない。
フィーの体のあちこちを叩いて、叫ぶ。
「ごほっ」
「大丈夫!?」
息を吹き返したかのような荒い呼吸をするフィーに安心した。
「シロー?」
フィーは不思議そうな顔から、ぼくの背中越しの世界を見て驚愕の表情を浮かべた。
「お前たちが逃げようとするなんて、すぐに気づいたさ。あの部屋から全員いなくなった時からね」
ザクロがその場所にいた。
その部屋の壁際に立っていた。
肩に手を置かれる。
「鬼ごっこも終わりだな」
振り返ると奇妙な服を着た人がいて、ぼくは逃げられないのだと悟った。
「君は戦うと決めたんじゃなかったか?」
ザクロのその言葉に、脳裏に蓮の刀と花の顔が浮かんだ。
そうして、キララと長髪の人は他の場所へ行き、ぼくとフィーとファイとそのほかの子たちは武器庫へと足を進めた。
ぼくとファイで武器庫の管理人に話をつけ、強引に武器庫を開けさせ、彼を気絶させて、フィーたちを呼ぶ。
全員が持ったのを確認したところで、武器庫から最初に出たファイが廊下の壁へと吸い込まれていった。
「え」
瞬きの間のことで、理解が追い付かないが、なにかとても恐ろしいことが起きていると直感した。
目の間には奇妙な服を着た人が一人立っている。
「逃げてッ!」
フィーがぼくを武器庫から出るように背を押し、誰かから取った槍を奇妙な服を着た人に向けて投げる。
それを期にぼくは廊下に向かって走り出す。
逃げながら銃やダイナマイトを放り投げ、折ってこられないように攻撃を仕掛ける。
ぼくは自分の持っている剣をぎゅっと握った。
「今の、プロヴァーレ?」
「来るの早くない?」
「うそでしょ」
どこへ逃げよう。
この先は何がある場所か、分からない。
じゃあどうする?
そう思っても彼らと戦って勝って逃げることしか思いつかなかった。
「こうなったらもうやるしかない」
「はぁ!?プロヴァーレと戦うっていうの?勝てるわけない、あんな化け物」
「じゃ、なにもせずここで死ぬの?」
彼らの声を背景音楽にして、ぼくは周りを見渡した。
やはり窓はない。
と、不意に自分が血まみれになっていることに気付いた。
痛みはない。
風導管の中で腹這いになっていたときに、きっと血が出たんだ。
でも、どうしてこんなにぱっくりと割れた傷で痛々しいのに、全然痛くないんだろう。
「この先は行き止まりだよ!手前の部屋!」
フィーが叫ぶ。
そうだ、彼はここの場所を熟知していた。
敵は一人。
なら何とかなるかもしれない。
「ぼくが引き付ける!みんなは逃げて!」
「シロー!?」
ぼくは走るペースを落とし、体が痛いふりをして後ろから追ってくる人へ近づく。
「逃げようとしたのか?」
「痛い、体が痛い、助けて、ごめんなさい」
奇妙な服を着た人に追いつかれたところで、差し出された手をつかむ。
これは痛そうだと言う彼の目が自分の傷に行ったことを確認して、素早く柄の先を耳の後ろにある突出した場所に思いきりぶつける。
立て続けに顔面に膝をお見舞いする。
それでも起き上がってきそうだったので、斬る。
しかし彼は、ぼくの剣を自分の腕で受け止めていた。
「なるほど、悪くない」
肉が割けて血が出ている。それなのに簡単に押しのけられ、しりもちをつく。
何度挑んでも、同じ結果だった。
彼の攻撃はかわせるものの、こちらの攻撃が一切通じない。
あきらめてフィーが向かった先へと走る。
奇妙な服を着た人は笑いながらぼくを追いかけてきた。
なんで笑ってんの?
何がおかしいの?
彼の理解できない恐怖に身を包まれながら、手前の部屋に入ると、そこは血の海だった。
「え…?」
この部屋に向かったフィーたち全員が倒れていた。
足を切断された子、四肢がない子、首がない子、背中に大穴が合いた子、体が変な方向に向いた子、壁に磔にされた子。
奇妙な服を着た人がフィーの首をつかんでいる。
口から泡が出て、体に力なく虚を見ている。
「どうして…」
口からこぼれてた言葉を音と認識するのと同時に、目の前にいる奇妙な服を着た人がフィーを放り投げた。
咄嗟にフィーのもとへ駆け寄り、お腹にどすんと衝撃がかった。
しっかりと投げ出されたフィーをつかんで地面につかないよう受け止める。
「フィー!しっかり!ぼくを見て!」
彼の両頬をつかみ、目を見るが、変わらず何も映さない。
フィーの体のあちこちを叩いて、叫ぶ。
「ごほっ」
「大丈夫!?」
息を吹き返したかのような荒い呼吸をするフィーに安心した。
「シロー?」
フィーは不思議そうな顔から、ぼくの背中越しの世界を見て驚愕の表情を浮かべた。
「お前たちが逃げようとするなんて、すぐに気づいたさ。あの部屋から全員いなくなった時からね」
ザクロがその場所にいた。
その部屋の壁際に立っていた。
肩に手を置かれる。
「鬼ごっこも終わりだな」
振り返ると奇妙な服を着た人がいて、ぼくは逃げられないのだと悟った。
「君は戦うと決めたんじゃなかったか?」
ザクロのその言葉に、脳裏に蓮の刀と花の顔が浮かんだ。