ビロードの口づけ 獣の森編
(2)
結月(ゆいげつ)。
獣の女たちは年に一度だけ妊娠可能になる。
その時期、男を選んで子どもを作るのだ。
女たちは通常、一度に複数の子どもを産む。
生まれた子どもは産んだ女たちによって集団で育てられるので、子どもが乳離れするまでの約半年間、女たちは子育てにかかり切りになる。
その間の生活の糧を選んだ男から得なければならないため、男選びは重要なのだ。
選択権は女にある。
男は同時に不特定多数の女に子どもを産ませる事が可能だが、女はせいぜい二、三の相手を受け入れるのが限度だからだ。
そのため男に拒否権はあっても、選択権はない。
隣でニコニコ笑っている侍女をジンが紹介する。
彼女は笑顔のままペコリと頭を下げた。
「奥様のお世話をさせて頂く事になりました。ミユと申します」
「あんたのとこのモモカには大分劣るが、うちの女たちの中じゃかなり優秀な方だ」
「いやーん。褒められたら私からお願いしたくなっちゃいますぅ」
「まだまだ教育の必要はあるがな」