ビロードの口づけ 獣の森編
ジンが言うには、人型になれる女は別に珍しくない。
けれど人社会で働いている女は少ない。
そのため言葉遣いや上下関係など、人社会の流儀をわきまえている女も少ない。
なにしろ女は一年の半分を子育てに拘束される。
人間のように何年もかかるわけではないが、若い内は毎年子どもを産む女もいるので、人社会に働きに出るのは難しいのだ。
とはいえ、今後人との付き合いが増えてくると、女たちが人の礼儀をわきまえないままでは色々と不都合がある。
男ばかりではなく女にも働いてもらわなければならない。
いきなり人社会に放り出しても使い物にならないので、ジンは城内で女の雇用を増やしていた。
何度も子育てを経験した女たちは、生活の糧になる男を何人か確保しているので、働く事に意欲を見せない。
けれどミユのように若い女たちは、人社会そのものや働く事に興味を示していた。
女に限らず城内はそういう若者たちが多く働いている。
人社会に出る事の足がかりでもあるので、城内では人型着衣が義務付けられていた。